漢方ビュー通信

その症状、瘀血かも?30代からのゴースト血管化に要注意!

年齢とともに生じる悩みの数々──、顔のくすみやシミをはじめ、手先が冷えやすくなったり、肩こりや頭痛の頻度が増えたり、むくみやすくなったり…
ですが、これらの悩みは単に老化が原因というわけではありません。
じつは、漢方医学で考える“血流が低下している状態”、「瘀血(おけつ)」が関係している場合があります。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、瘀血に伴う不調について解説します。

30代から進み始めるゴースト血管化とは

私たちのカラダ中に張り巡らされている血管には、動脈、静脈、細小動脈、毛細血管の4種類があり、総延長は約10万km、なんと地球2周半の長さにおよびます。その血管の中でも、99%以上を占めているのが毛細血管です。

年を重ねると、この毛細血管の穴が広がることで血液が漏れやすくなり、血管が消滅する「ゴースト血管」という現象が生じていきます。これは30代から始まり、40代半ばに急激に進むといわれています。
このゴースト血管が進行すると血流が滞るため、瘀血の症状である冷えや便秘、肩こり、むくみなどを引き起こします。また、乾燥やくすみ、抜け毛など見た目への影響も少なくありません。

血管の健康は、内皮細胞の改善を意識して

血管の構造はいくつかの層によって成り立っていますが、その中でも一番内側にある内皮細胞が、最もダメージを受けやすい部分になります。この内皮細胞が、老化したり、酸化、糖化、炎症したりすることによって血管の状態が悪くなると、瘀血の状態が起こりやすくなるとされています。

そこで、ポイントになるのが、血管内皮細胞にある『Tie2(タイツー)』と呼ばれる受容体です。
Tie2とは、血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼ(タンパク質のチロシン残基をリン酸化する酵素)で、近年、血管の老化(ゴースト化)に深く関わっていることが明らかになっています。
このTie2が活性化すると、毛細血管の隅々にまで血液が巡るようになるため、ゴースト血管化の抑止となります。
その結果、栄養分や老廃物が正常に運搬され、シワやたるみの改善、血管系の疾患、認知症などの改善などにもつながるといわれています。
Tie2の活性には、シナモンやヒハツ(コショウ科)、ルイボスティー、ターメリックなどの食品群が挙げられます。

また、内皮細胞からは、血流が速くなるとNO(一酸化窒素)と呼ばれる物質が放出されます。その働きとして、血管拡張による血流の改善や血管の酸化、炎症の抑止、血栓を作りにくくしたり、血管のプラークの発生を抑えたりすることが挙げられますが、これらは動脈硬化の予防になるとされています。
偏食を避け、ストレスを溜め込まずに、適度な運動を行うことが、内皮細胞の機能改善につながります。赤身の肉やナッツ類などに多く含まれるアルギニンを摂り入れることも有効です。

瘀血改善の味方に漢方薬

原因不明の微熱には漢方がオススメ

さまざまな病気や症状の元になる瘀血──、その対策としてすぐにできることは、適度な運動の習慣や良い姿勢を保つこと、食事内容の見直し、十分な睡眠などがありますが、同時に漢方薬の活用もおすすめです。
症状や体質によって適切な処方は変わってきますが、代表的なものに「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」や「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などがあります。
自分にはどれが合っているのか、なるべく自己判断は避けて、専門の医師や薬剤師に相談の上、処方してもらうとよいでしょう。

瘀血を改善する生活を実践しつつ、気になる症状に対しては漢方薬で対策するといったように、無理のないように瘀血対策を実践していきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Mar 19 2024

薬剤師・大久保 愛

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