漢方ビュー通信

女性に多い血虚とは?その対策について解説

 

漢方医学では、爪や髪の毛は「血の余り」という言葉で表現されることがあります。
そのため、血虚(けっきょ:体内の血液量や血液の質の低下)」の状態に陥ると、爪が割れやすくなったり、髪の毛がパサついて艶がなくなったりと、調子が悪くなります。

また、爪や髪の毛を作り出すために欠かせないものとして、コラーゲンが重要な役割を果たします。
コラーゲンは皮膚や結合組織、髪の毛などの健康的な成長や維持に必要なタンパク質であり、皮膚や髪の弾力性や強度を保ちます。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、血虚対策について解説します。

血虚のセルフチェック

それでは、次の悩みから自分が「血虚」の状態かどうかをチェックしてみましょう。

睡眠の質が悪い
爪が弱い(割れやすく、欠けやすい、平たくなる、薄くなるなど)
氷を食べたくなることがある
息切れしやすい
立ちくらみやめまいがする
頭痛が起こる
肌が乾燥しやすい
集中力が低下することがある
抜け毛が多い
神経が過敏になることがある
舌や下瞼の裏の色が白い
足がつりやすい

いかがでしょうか。3つ以上が該当したら「血虚」の可能性があります。

血虚と似た症状の鉄欠乏症

先ほどの質問で、血虚のチェックを行いましたが、これは、じつは鉄欠乏の症状と似ています。
そこで、鉄の働きも今一度おさらいしておきましょう。

・赤血球を作り、酸素を運ぶ
・ミトコンドリア内でエネルギーを作る過程に必要
・コラーゲンなどタンパク質の生成に関与する
・SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)という抗酸化酵素の構成要素として必要
・免疫機能の正常な運用に関与する

以上のように、鉄は多岐にわたり重要な働きを果たしています。
体内の鉄が不足すると、赤血球の生産や酸素の運搬に支障が生じる可能性があり、貧血や疲労感、息切れ、頭痛、めまい、皮膚や爪の変色などを起こす場合があります。

コラーゲンの働きについて

鉄の働きのひとつ、コラーゲンについて少し掘り下げてみましょう。
ヒトのタンパク質の約1/3はコラーゲンです。
皮膚、髪の毛、爪、目、歯、骨、軟骨、血管、腱、じん帯、筋肉(筋膜)、内臓、細胞間などあらゆる部分を構成するために必要な存在であり、細胞をつなぎあわせ構造的なサポートをしています。
コラーゲンは、グリシンやプロリン、ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸から作られ、その合成には鉄とビタミンCを必須としています。
そのため、「血虚」の症状として肌や爪、髪の毛の乾燥などの症状が出てくると考えられています。

血虚の改善には、胃腸のケアが欠かせない

「血」を構成するうえで欠かせない栄養素として、鉄のほかにタンパク質やビタミンB12や葉酸などがあります。
これらの栄養素を食事から消化吸収するためには、胃酸の分泌が必要不可欠です。また、腸の状態が思わしくないと、吸収能力は低下してしまいます。

そこで、「血虚」の対策には、単純に鉄をたくさん補うのではなく、胃腸のケアも同時に行う必要があります。ちなみに、過剰な鉄の摂取は、活性酸素を発生させたり、腸内環境を悪化させてしまう原因になることがありますので注意しましょう。

鉄の重要性と漢方薬の活用

私たちのカラダでは、鉄は必要量と回収される量がバランスよく排出されています。
もともと体内に蓄えられている鉄──貯蔵鉄が、主に肝臓や骨髄などの臓器に存在し、体内の鉄のバランスを保つ役割を果たしています。必要に応じて利用され、不足した場合には鉄の補給源として利用されます。
一般的に、成人男性の平均的な貯蔵鉄量は約1,000mgから1,200mgであり、成人女性の場合は約300mgから500mgといわれています。女性の貯蔵鉄量が少ないのは、月経による鉄の損失が影響しているからです。したがって、女性は鉄不足による血虚がよく見られるのです。

まだ漢方薬を服用したことのない人へ

前述したように、鉄不足は爪や髪、肌の健康に影響を与えるため、鉄の補充漢方薬の活用がおすすめです。
漢方薬には、血を補う「当帰飲子(とうきいんし)」や「加味帰脾湯(かみきひとう)」、冷えを改善する「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」、高血圧に伴う頭重を緩和する「七物降下湯(しちもつこうかとう)」などがあります。
悩んでいる人は、個々の体質や体調によって処方される漢方薬が異なりますので、専門の医師や薬剤師に相談して、自分に合った処方をしてもらうとよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Mar 26 2024

薬剤師・大久保 愛

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