老化の大敵、活性酸素から身を守るために
よく耳にする老化予防として、抗酸化作用の高い食品であるスーパーフードの摂取、ビタミンCやアスタキサンチンやレスベラトロール、アントシアニンなどの栄養素をサプリなどで補うといったことを日常に取り入れている人は多いと思います。
さて、エイジングケアを語る際に必ずと言っていいほど出てくる、活性酸素や抗酸化といったワードですが、そのメカニズムを理解している人はどれほどいるでしょうか。
そこで、今回は薬剤師である筆者が、今さら聞けない老化の大敵、活性酸素について詳しく解説します。
活性酸素のメカニズムとは
私たちのカラダに有害物質が侵入した際、白血球がその防御のために働きます。
このとき、白血球は活性酸素を放出して病原体を攻撃し、感染症対策などに働きます。さらに、細胞間のシグナルの伝達や細胞の分化、アポトーシス、排卵、受精などの生理活性物質にも関与します。
ただし、体内の抗酸化システム(次の項で詳しく解説します)を上回ると、活性酸素が過剰に産生され、“酸化ストレス”と呼ばれる状態が生じます。これにより細胞が損傷され、老化や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、がんなどの疾患の原因となるのです。
また、私たちは常に呼吸をしており、その過程で体内に取り込まれる酸素の一部が活性酸素種となります。これにはスーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素などが含まれます。
吸い込まれた酸素のほとんどはミトコンドリアで利用されますが、一部は活性酸素となり、体内の酸化ストレスを引き起こします。
活性酸素は不安定な形態を持つため、脂肪、タンパク質、核酸、ミトコンドリアなどを酸化し、細胞を傷つけるとされています。特に、脂質でできた細胞膜は活性酸素の標的となりやすく、脳など脂質が多い組織では脳機能の低下につながる可能性があります。
活性酸素の攻撃から身を守る、抗酸化システムとは
前の項で出てきた「抗酸化システム」について、少し掘り下げていきます。
抗酸化システムとは、体内で活性酸素が増加することに対抗するための仕組みで、活性酸素を中和し、体内の酸化ストレスを軽減するためのメカニズムです。このシステムには、抗酸化酵素や抗酸化物質が含まれています。
活性酸素を無害な物質に変換する役割を果たす抗酸化酵素には、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどがあります。
一方、活性酸素を直接中和することで酸化ストレスを減少させる抗酸化物質には、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどがあります。さらに、体内で合成されるグルタチオン、尿酸、メラトニン、ビリルビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、ウロビリノーゲン、フェリチン、CoQ10なども含まれます。
ちなみに、抗酸化酵素のSODの活性は寿命と関連しており、健康維持に重要とされていますが、年齢とともに減少していくことが分かっています。
エイジングケアに重要な「腎」
老化に対して、漢方医学では「腎(じん)」(※)の働きを助けることが有効と考えられています。
そのため、加齢に伴い低下する抗酸化システムに対処するために、抗酸化作用のある食事を摂取したり、活性酸素の過剰発生を防ぐ行動をとりながら、「補腎(腎の働きを良くすること)」を行うことがエイジングケアにとって重要なのです。
※…腎とは、腎臓そのものではなく、成長、発育、生殖に関する働きを左右する“生命力の元”とされています
そして、漢方薬の中には、「腎」の働きを助けるものが多く存在します。
古来から、美しいとされる人々は「補腎」目的で漢方薬を愛用してきたともいわれています。現代でも、乾燥肌やクマ、むくみ、頻尿、腰痛、難聴、疲れ目などの老化に伴う症状の改善に適応した漢方薬があります。
エイジングケアを促進したいと考えている人は、漢方医学に精通した医師や薬剤師に相談し、“漢方”を日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
いずれにしても、カラダの健康状態を維持するために、バランスの取れた食事や健康的な生活習慣を通じてサポートすることが重要です。今回のテーマでもある活性酸素の増加は、抗酸化システムを過負荷にし、酸化ストレスが増加する要因になるので、適切な栄養摂取やストレス管理など、健康維持に努めていきましょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic薬剤師・大久保 愛