国立がん研究センター「最新がん患者数と5年生存率」発表
日本のがん治療のいま
日本のがん治療のいまを知りたい――。
そんな要望に答える最新のデータが、今年8月9日に国立研究開発法人国立がん研究センターから公表されました。
これは、全国のがん診療連携拠点病院などから集めた、院内がん情報を用いてまとめた報告書で、2015年の1年間にがんと診断された患者さんの数と、2008年にがんと診断された患者さんの5年生存率が分かります。
2015年の1年間に診断された患者数とⅠ期の割合
まず、がんの患者数ですが、現在は各施設で登録された院内がん情報に基づいていて、がんの種類、進行度(ステージ)、治療法、年齢などの詳細が分かるようになっています。
今回の集計では、427施設における、胃、大腸、肝臓、乳房、肺の5部位のがんに、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、子宮内膜、膀胱、甲状腺の7部位のがんを加えた12部位で集計。
ここでは5部位のがんと子宮頸がんの患者数、それから0~Ⅰ期の、いわゆる早期の段階で発見された人の割合を紹介します。それが以下になります。これを見ると、Ⅰ期までで発見される割合が高いがんが、胃がんや乳がん、子宮頸がんでした。
胃がん | 7万6,884人(うち0期0%、Ⅰ期63.2%) |
---|---|
大腸がん | 9万9,799人(うち0期13.8%、Ⅰ期20.4%) |
肝臓がん | 2万4,537人(うちⅠ期44.1%) |
肺がん | 7万8,152人(うち0期0.1%、Ⅰ期41.6%) |
乳がん | 7万1,634人(うち0期14.2%、Ⅰ期40.0%) |
子宮頸がん | 2万5,819人(うち0期62.2%、Ⅰ期14.2%) |
病期(ステージ)別の5年相対生存率
続いて、5年相対生存率(他の病気などの死因の影響を取り除いた死亡の割合)についてみてみましょう。やはり早期での生存率は高く、進行するほど低くなっていきます。また、がんの種類によっても大きく異なることがわかります。
胃がん | Ⅰ期95.0%、Ⅱ期68.8%、Ⅲ期42.8%、Ⅳ期9.0% |
---|---|
大腸がん | Ⅰ期95.5%、Ⅱ期88.5%、Ⅲ期76.5%、Ⅳ期17.5% |
肝臓がん | Ⅰ期58.5%、Ⅱ期40.2%、Ⅲ期16.1%、Ⅳ期2.5% |
肺がん | Ⅰ期80.9%、Ⅱ期47.8%、Ⅲ期20.9%、Ⅳ期4.6% |
乳がん | Ⅰ期100.0%、Ⅱ期95.7%、Ⅲ期81.6%、Ⅳ期35.2% |
子宮頸がん | Ⅰ期95.0%、Ⅱ期79.1%、Ⅲ期62.3%、Ⅳ期23.6% |
乳がんでは10年後の相対生存率も必要
国立がん研究センターによると、今回の集計で分かったことは、「高齢者のがんが増えていること」や、「治療を受けない人の割合が微増していること」など。
高齢者で進行したがんが見つかった場合、手術や薬物療法など積極的な治療を受けない(行えない)ケースがあることが、このことからも推測できます。
また、女性の乳がんはⅠ期、Ⅱ期が多くて生存率も高いものの、このがんでは10年後の生存率についても注視されていますので、長期的な視野で見ていくことが必要だということです。
こちらも参考に!
<国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス がん登録・統計」統計ページ>
「2015年全国集計」
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_registry.html
「2008年5年生存率集計」
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.html
医療ライター・山内