月経は女性の健康のバロメーター

女性のカラダと切り離すことができない「月経」。
旅行などのスケジュールを気にしなければならなかったり不快な症状が出たりと、なにかと面倒なことが多く憂うつになりやすい期間でもあります。しかし月経は、ホルモンバランスが整っているかどうか、赤ちゃんを産めるカラダであるかどうか、女性特有の病気が隠れていないかなどを知るうえで大切な「バロメーター」です。日ごろから、月経周期・出血期間・出血量・月経に伴う症状など関心をもつようにしましょう。

ホルモンの変化と基礎体温

エストロゲン卵胞期の後半から排卵直前までに分泌量がぐんと増え、排卵すると分泌量が減少します。 プロゲステロン排卵後の黄体から分泌されます。妊娠が成立しないと分泌が減少します。

女性のカラダはおよそ1カ月の周期(平均28日)で変化します。大きく卵胞期と黄体期に分かれ、その間に排卵があります。

1. 卵胞期(月経開始日から14日目ぐらいまでの期間)

卵巣にある原始卵胞(女性が生まれつき持っている卵胞の元となる細胞)が、脳下垂体でつくられるFSH(卵胞刺激ホルモン)に刺激されて成長を始めます。成熟した卵胞からは女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が多量に分泌され、子宮の内側の組織である内膜が徐々に厚くなっていきます。

2. 排卵(次の月経開始日のおよそ14日前)

血液中のエストロゲンの量が一定量を超えると、脳の視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されます。さらに血液中のGnRHが一定量を超えると、下垂体からLH(黄体形成ホルモン)が大量に分泌されます。このLHの大量分泌を合図に卵胞から卵子が飛び出し排卵となります。

3. 黄体期(排卵後から月経が始まるまでの約14日間)

排卵後の卵胞は黄体という組織に変わり、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンをつくるようになります。プロゲステロンは体温を上げることから、この時期を「高温期」ともいいます。
このプロゲステロンのはたらきで子宮内膜はさらに厚くやわらかくなり、受精卵が着床しやすい状態になります。妊娠の準備のための期間でもあり、カラダは栄養や水分を蓄えやすくなるため、むくみやすいなど女性にとっては不快な症状を感じやすい時期でもあります。受精にいたらない場合は、内膜がはがれて月経が起こります。

女性ホルモンの流れ

女性ホルモンの流れ

女性の味方「女性ホルモン」の種類

女性らしい容姿にする、妊娠や出産に関わるなど、女性としての機能を充実させているのが女性ホルモンです。ホルモンとは、カラダの組織や器官がちゃんとはたらくよう調整する物質のことで、視床下部や内分泌器官(下垂体、甲状腺、副腎、膵臓、女性では卵巣、男性では精巣など)から放出されます。
この中で女性ホルモンと呼ばれるものはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つ。この女性ホルモンに関わるホルモンには、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、子宮を収縮させるオキシトシン、乳汁分泌に関係するプロラクチンなどがあります。

ホルモンの種類とはたらき

ホルモン 分泌場所 主なはたらき
エストロゲン(卵胞ホルモン) 卵巣 排卵を促す・乳房や子宮を発達させる・自律神経のバランスを整える・骨密度を維持する・血液中のコレステロールを減らす・脳細胞を活性化する・ほかのホルモンの分泌を促すなど
プロゲステロン(黄体ホルモン) 卵巣 子宮内膜の厚さを維持して着床しやすい状態にする・妊娠後の胎盤の状態を安定させる・基礎体温を上げるなど
性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH) 脳(視床下部) 卵胞刺激ホルモン(FSH)、
黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促す
卵胞刺激ホルモン(FSH) 脳(下垂体) 卵胞の成長を促す
黄体形成ホルモン(LH) 脳(下垂体) 排卵を誘発する・プロゲステロンの分泌を促す
オキシトシン(LH) 脳(下垂体) 子宮を収縮させて分娩を促す・乳汁分泌を促す
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン) 脳(下垂体) 乳汁分泌を刺激する

女性のカラダに欠かせない女性ホルモンの代表、それがエストロゲンです。女性の一生はまさにこのエストロゲンの影響を受けているといっても過言ではありません。
エストロゲンは思春期に入って初経(初潮)を迎えたあたりからつくられます。その後、急激に分泌量が増えて20代〜30代前半にピークを迎え、妊娠や出産、授乳に適した状態に。50歳前後からは徐々に減っていき、やがてほとんど分泌されなくなります。

エストロゲン量の変化

エストロゲン量の変化

「女性のカラダに影響を与えるホルモン」が関わる病気

ホルモンのバランスが崩れると、カラダのさまざまな器官や組織に影響を及ぼします。「女性のカラダに影響を与えるホルモン」が関わる代表的な病気や症状には、月経不順や子宮内膜症、子宮筋腫、不妊、更年期特有の不快症状などがあります。

女性のカラダに影響を与えるホルモンが関係する主な病気・症状

月経不順 正常な月経周期(25〜38日)や出血期間(3〜7日)が乱れた状態。周期の異常と出血期間の異常がある。女性ホルモンのアンバランスにより起こることが多いが、子宮・卵巣関連の病気や内分泌関連の病気が影響している場合もある。
【周期】
正常な月経周期から6日以内の変動は正常範囲内
*頻発月経:月経周期が短縮し24日以内で月経が始まる
*希発月経:月経周期が延長し39日以上で月経が始まる
*続発性無月経:これまであった月経が3カ月以上停止したもの
【出血期間】
*過短月経:出血日数が2日以内のもの
*過長月経:出血日数が8日以上のもの
【量】
*過多月経:月経血量が異常に多いもの
*過少月経:月経血量が異常に少ないもの
子宮内膜症 子宮内膜や子宮内膜様の組織が、本来あるべき子宮以外の場所(主に骨盤内、まれに腸や肺)で発生・発育する病気。月経痛がひどく、不妊の原因にも。エストロゲンで病気が進行する。
子宮筋腫 子宮内や周囲にできる良性の腫瘍。エストロゲンで筋腫が大きくなる。主な症状は月経痛、過多月経、過多月経による貧血、便秘、頻尿などで、不妊の原因にも。
多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群 卵巣内に多数の卵胞ができ、ある程度の大きさになるものの、排卵が起こりにくくなる病態。主な症状は月経異常(月経不順、無月経、無排卵月経)、男性化(多毛、にきび、低音声)、肥満などで、不妊の原因にも。
高プロラクチン血症 プロラクチンが過剰に分泌されている病態。産後でもないのに乳汁が分泌し、それが受診のきっかけになり発見されることも。月経不順や排卵障害の合併が多く、不妊の原因にも。
不妊症 妊娠を望む健康な男女が避妊をおこなわずに性交しているにもかかわらず、1年以上妊娠しないもの。不妊の原因には男性側、女性側、両方に原因がある場合と、特に何も原因が認められない場合がある。
更年期障害 卵巣の活動性が次第に低下し、月経が永久に停止することを閉経という。閉経前後5年間は更年期とよばれ、この期間に現れるさまざまな不快症状が、日常生活もままならないほどに支障をきたしてしまうものを更年期障害と呼ぶ。エストロゲンの急激な減少が主な原因だが、加齢によるカラダの変化、取り巻く環境の変化、心理・精神的変化が複雑に影響することで、ホットフラッシュ、動悸、めまい、倦怠感、情緒不安定などさまざまな不快症状が起こる。

監修医師

麻布ミューズクリニック 院長 玉田 真由美 先生
院長 玉田 真由美 先生

熊本大学医学部卒業。慶應義塾大学大学院医学研究科修了。 熊本大学医学部附属病院第二内科(現:血液膠原病内科)入局後、熊本大学医学部附属病院を中心に熊本県内の病院で内科診療に従事したのち、亀田総合病院附属幕張クリニックで消化器内視鏡検査の研鑚を積む。
慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御部門にて癌の代謝を中心に研究を行い学位取得。
自身の体調不良が漢方治療で改善されたことをきっかけに、慶應義塾大学漢方医学センター、自治医科大学東洋医学部門、麻布ミューズクリニックにて漢方を学び、2016年4月より麻布ミューズクリニック院長就任。自治医科大学地域医療学センター東洋医学部門非常勤講師。
医学博士・日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 ・日本東洋医学会漢方専門医

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