子どもの健康と漢方

子どもと漢方の上手な付き合い方

子どもが飲む漢方薬の安全性

漢方薬のなかには、授乳中のお母さんや赤ちゃんが飲める処方もあります。ただし漢方薬にも副作用はありますので、服用後に変わった様子がないか、保護者がきちんと見ておくことが大切です。また漢方薬にはミカンの皮やシナモン、小麦由来成分などが含まれている場合があります。子どもの体質やアレルギーの有無についてかかりつけ医に相談しておくと安心です。

漢方薬を飲んでもらうための心がけ

漢方薬には独特の苦みや臭いがあるため、子どもはすんなりとは飲めません。赤ちゃんのうちは比較的飲ませやすいですが、2〜5歳ごろの自我が出始めた時期は薬に敏感になり、「効くから飲んでね」というだけで飲ませるのは難しくなります。はじめて漢方薬に挑戦する際は、比較的甘くて飲みやすい処方にしてもらうといいでしょう。

まずは子どもと医師、親御さんがコミュニケーションをしっかり取って、信頼関係を築いておくことを一番に考えてください。特に6歳以降は「ちょっとまずくてもがんばろう」という姿勢が出てきます。処方医が漢方薬の効果や服用方法を細やかに説明し、なぜこの薬が必要なのかを子どもと保護者の双方に理解してもらう必要があります。そのうえで、親御さんにやっていただきたいのは、『飲めたら大げさなくらい褒めてあげる』ということ。ただ、いろんな工夫をしても飲めない子はやっぱり飲めない。そんなときは無理強いはしなくても大丈夫。必要があればまた勧めればいいし、成長とともに飲めるようになったりもします。

生活改善あってこその漢方薬

いくら漢方薬を飲んでいても、生活習慣が乱れたままで不調を解消することはできません。例えば日中の多動や激しい癇癪は、睡眠習慣の乱れが背景に潜んでいるケースもあります。外来にいらっしゃった親御さんには、漢方薬の処方と同時に、食事や睡眠、運動など生活全般を見直して心身のバランスを整えていくことの大切さをお話ししています。そのサポートをするのが漢方薬です。

漢方には子どもの状態を表す「二余三不足(にあまりさんぶそく)」という言葉があります。これは、子どもは感情の起伏が激しく癇癪を起こしやすい一方で、風邪をひきやすく、お腹を壊しやすいというアンバランスな状態にあることを示しています。この言葉を知らなくても、子育ての経験のある方なら実感されているのではないでしょうか。漢方薬は、子どもの内部の過剰なエネルギーを抑え、逆に足りない部分を補うことで、心身のバランスを整える役割を果たします。まさに、子どもにこそ漢方は有効だといえるでしょう。

監修医師

さかざきこどもクリニック 院長 坂﨑 弘美 先生
坂﨑 弘美 先生

大阪市立大学医学部卒業。大阪市立(現・公立)大学医学部附属病院小児科入局。和泉市立病院小児科、大阪掖済会病院小児科を経て、2004年10月さかざきこどもクリニック開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会地域総合小児医療認定医、日本小児東洋医学会運営委員、日本小児漢方懇話会幹事。『フローチャートこども漢方薬 びっくり・おいしい飲ませ方』など著書多数。

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