漢方ビュー通信

「ドライマウス」と「唾液」の関係性

「ドライマウス」と「唾液」の関係性

口の中がネバネバして口臭が気になる。
暖房を使うと口の中が乾く。
香辛料の効いた料理を食べると舌が痛くなる。

このような症状が長く続いているなら、唾液の分泌量低下による「ドライマウス」かもしれません。

今回は、薬剤師である筆者が、唾液のもたらす大切な役割と、ドライマウス対策にもつながる唾液を増やす方法について解説します。

唾液の大切な役割

唾液は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3つの大唾液腺と、多数存在する小唾液腺から分泌されています。その量は、健康な成人で1日あたり1.0〜1.5Lほどといわれ、唾液が分泌される唾液腺は自律神経によって支配されていています。

その唾液は、口の中を潤しながらさまざまな役割を発揮します。順番に解説していきましょう。

<唾液の役割>

1)抗菌作用・免疫力がアップする

唾液には、免疫グロブリン、リゾチーム、ラクトフェリンなどの成分が含まれていて、それらは抗菌作用や免疫を高める働きがあります。
そのため、唾液には風邪やインフルエンザ、口内炎、虫歯などを防いでくれる効果があります。

2)口臭予防になる

口臭の原因菌は、嫌気性の細菌で酸素がない環境で増殖しますが、唾液は口腔内への酸素の供給や、細菌の増殖を抑える働きがあるため、口臭予防の効果があります。
ちなみに、睡眠時の唾液の分泌は通常の10分の1程度になるため、寝起きの口臭がきつくなるのはそのためです。

3)食べ物が飲み込みやすくなる

唾液は、飲み込む働きをスムーズにします。
食べ物は口の中で細かくされバラバラになりますが、喉を通る時には唾液と混ざることによって一つの塊となり、飲み込みやすくなっています。

4)舌の保護

人間は、食べ物に含まれている“味物質”を唾液によって溶解し、舌にある味蕾(みらい)がそれを感知することによって味を感じます。唾液は、その舌(味蕾)が擦れて傷つかないように保護の役割を担っています。

5)虫歯の予防

食後は口の中が酸性に偏るため、歯のミネラルが溶け出し虫歯になりやすい状態になります。
唾液には、口腔内を中性にする働きと、歯を再石灰化する働きがあるので、虫歯になりにくくさせる効果があります。

6)消化を助ける

食事の際、食べ物を湿らせ、咀嚼しやすく、食べかすが口腔内に残らないように働きます。
また、糖質の分解を助ける「アミラーゼ」が分泌され、消化しやすくなります。

冬にドライマウスになりやすい原因

冬にドライマウスになりやすい原因

ドライマウスとは、唾液が減り口の中が乾燥する状態のことを指します。
唾液は、ストレスや加齢、薬の副作用などによって減少しやすいとされていますが、じつはそれ以外にも、冬特有のドライマウス発症の原因があります。

水分を摂る量が減るため

寒くなると、汗をかく量が減るため喉も乾きにくく、水分の摂取量自体が減ります。
そうすると、単純に体内の水分量が減り、唾液の分泌量も減少します。

空気が乾燥しているため

空気が乾燥していることで、口の中の水分も奪われ唾液の分泌量が減少します。

風邪などで口呼吸が多くなるため

冬は風邪をひきやすいシーズンなので、鼻風邪のせいで口呼吸になる人が増加します。口呼吸は口の中の乾燥につながり、唾液の分泌量が減少します。

唾液を増やす方法は

唾液を増やす方法は

こうして唾液の分泌量が減ると、ドライマウスをはじめ、さまざまなトラブルを引き起こす原因となります。
そこで、日頃から実践できる“唾液を増やす方法”を紹介します。

  1. 1日に1.0〜1.5Lの唾液が分泌されるので、最低でも1.5Lは水分を摂るようにしましょう。そのとき、一度に飲むことは避け、こまめに水分補給をすることが大切です。
  2. 食事をするときは、一口30回以上噛むようにしましょう。噛むことにより、唾液の分泌量が増えます。
  3. 梅干しやレモンなど酸っぱいものを食べて、唾液の分泌を促しましょう。
  4. 唾液腺のある耳下腺、顎下腺、舌下腺を軽くマッサージすると唾液の分泌量が増えます。
  5. 舌を“ら”と発声する形にし、声は出さなくてもいいので、「ら・ら・ら・ら…」と呟いてみましょう。
    舌を動かすことで唾液の分泌が増えます。

唾液の分泌は、気温が下がるにつれて減っていく傾向にあります。
上記のような対策を実践しても、口腔内の乾燥が気になるようであれば、早めに病院へ行き、相談してください。
病院では、唾液の分泌を促す薬(漢方薬の場合もあり)を処方してくれる場合もあるので、さまざまな体調不良が起きる前に対応していきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

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https://www.kampo-view.com/search.html

Jan 11 2019

薬剤師・大久保 愛

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