「わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~」レポート②
コロナ禍で「カラダがあちこち弱っている」と実感
(前回から続く)高尾先生とコムアイさん。不定愁訴をめぐる話のなかで、それぞれがご自身のつらい不調の経験を語ってくれました。
まず高尾先生は、「病院に勤務していた30代、お産の立ち会いなどでほとんど眠れない日が続いたんです。そのうちに昼のパフォーマンスが落ちていることに気付いて、いずれは夜に働かないような働き方にしようと決めたんです」
眠れないことによるリスクを感じてから、仕事先や生活習慣を改め、今はしっかり7時間半の睡眠を確保できているそうです。
コムアイさんのほうは、コロナ禍で体調の変化を感じていたようです。
「これまでは自然に触れて元気が出ていたけれど、休んでも休んでも元気にならないときもあって…。忙しかったときは、休めば元気になるだろうって思っていたけれど、(コロナ禍で時間ができると)カラダがあちこち弱っていることを実感しました」と言います。
不調を乗り越える生活の基本「三原則」とは?
西洋医学的なものでは解決できないことがある──、不定愁訴と呼ばれるさまざまな不調。
では、それらをどうやって解決していけばいいのでしょう。
高尾先生は、「生活のなかの基本的な部分。食べること、動くこと、休むことが健康の三原則」と言います。
「これはずっと前から言われていること。ただ、日常生活のなかで自然にできるのは、食べることと、休む(寝る)ことの2つ。カラダを動かすことは自然にはできません。だから、〝運動をする時間を持とう〟と意識することが大事です」
コムアイさんは、不調があると鍼や整体などに頼っているそうですが、高尾先生は「誰かに何かをしてもらうケアに加えて、自分でできるケアを知ることも必要」とアドバイス。
コムアイさんも、「ケアを誰かに頼ってしまうと、知識もテクニックも上がっていかない。自分にできることを身に付けて、育てていきたい」と前向きに話してくれました。
不定愁訴で「漢方」を上手に使うコツ
不定愁訴のなかにはセルフケアが有効なものだけでなく、“漢方”が効果的なこともあります。
漢方に馴染みがない人もいるかもしれませんが、漢方では一人ひとりの症状や体質に合わせて処方が決まることもあり、高尾先生のクリニックには漢方の効果に期待して「漢方薬を使ってみたい」「試してみたい」と言ってくる患者さんがとても多いそうです。
コムアイさんも漢方薬の服用経験があり、「中高生のころ、生理痛のときに処方してもらって『当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)』を飲んでいました」と言います。
漢方の特徴は、全体をよくすることで困っていた症状が改善されるところ。
「実際に使っていただくと、全体がよくなっていきます。そこが(症状一つひとつに対応する)西洋医学と違うところ。漢方薬はカラダを巡らせて温めるという作用があるので、興味があれば取り入れていただくといいでしょう」と高尾先生。
この漢方薬を処方するときに大事になるのは、漢方特有の「ものさし」。そのひとつが「気・血・水(き・けつ・すい)」で、これらが巡らなくなったり、足りなくなったり(逆に増えすぎたり)すると、体調に支障を来すと考えられています。
高尾先生は、「元気になるということは、まさに〝気が巡った状態〟逆に、気が足りなくなったり、巡らなくなったりしたときに漢方が役立つんです」。
高尾先生が最近よく診る不定愁訴のひとつに、「メンタル系の問題」があるそうです。
「コロナの影響もありますが、女性にはいろいろな役割、立場や責任があるので、ストレスを抱えやすいです。そういう方には、抑肝散(よくかんさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)を処方したりします。もし不定愁訴で困っていて、何とかしたいと思っている方は、一度、婦人科で相談されるといいと思います」(高尾先生)
プログラムの最後は高尾先生が教えるヨガでスッキリ
プログラムの後半では、高尾先生の指導によるヨガの体験会が行われました。
「運動の1つとしてヨガを捉えることもできますし、ヨガをしていると何となくオシャレな感じがしますよね」と高尾先生。
ヨガの魅力は、「体力があるときはパワーヨガ、疲れているときは呼吸中心のヨガというように、自分で調整、チューニングできるところ」だそう。
いずれにせよ、ヨガで大事なのは呼吸。呼吸をすることで心が落ち着くとのこと。
「日常生活だと1分間に10~12回呼吸をしますが、それを6回に減らすだけで心が落ち着きます。何となくざわざわしているときや緊張しているときに、ゆっくりと呼吸をすると、前向きになれます」(高尾先生)
ヨガでは、正座をして上半身を前に倒すポーズや、四つん這いになって背中を反らしたり曲げたりするポーズ、うつ伏せになって背中を反らすポーズなどを体験。
ヨガを終えたコムアイさんは、「カラダがポカポカして、血色がよくなった。上半身と下半身に血が巡っている気がします」。先生からも顔色がよくなったと言われていました。
プログラムの最後には、高尾先生が「動くこと、休むこと、漢方、ヨガ。できることを見つけほしい」と笑顔で話していたのが印象的でした。
参考
医療ライター・山内