季節の変わり目の不調対策には、粘膜免疫を意識して
私たちは常に呼吸をし、そして生きるために食事を摂取します。
その際、最初に外部と接触するのが口、鼻、腸などにある「粘膜」です。そのため、粘膜には免疫細胞──「粘膜免疫」が豊富に存在しています。
しかし、乾燥や腸内環境の乱れにより、この粘膜免疫の効果が低下することがあります。
そこで今回は薬剤師である筆者が、体調を崩しやすい季節の変わり目などでも、健康に過ごすために重要な粘膜免疫と漢方の考え方について解説します。
粘膜免疫は腸内環境と乾燥に気をつけよう
私たちのカラダには、冒頭でもお伝えしたように最前線でウイルスや病原体、花粉などの異物から守ってくれる粘膜免疫が存在します。
この粘膜に含まれるIgAという抗体が、外敵であるウイルスや病原体などをキャッチし、無力化して体内への侵入を防いでくれるのです。また、この抗体は特定の病原体のみをキャッチするのではなく、多種多様な病原体に反応できるため、非常に守備範囲の広い免疫機能といえます。
そのため、IgAが何らかの理由で少なくなると、バリア機能が低下し、一気に感染症やアレルギー症状、疲労感などを感じやすくなってしまいます。特に、IgAは小腸や大腸に多く存在するため、腸内環境が乱れている状態だと、バリア機能の低下が起こってしまう恐れがあります。
また、乾燥している環境──水分摂取が不十分だったり、口呼吸をしていたり、交感神経が優位になっていたりすることでも、粘膜免疫の低下につながります。
したがって、体調を崩さず健康に過ごすためには、腸内環境を整えること、口や鼻の粘膜を乾燥させないようにすることがポイントになります。
漢方医学の視点から不調対策を
漢方医学には「五臓(ごぞう)」という概念があり、西洋医学で考える臓器とは異なる「肝・心・脾・肺・腎(かん・しん・ひ・はい・じん)」があります。
(漢方ビュー通信「少しでも若く!それなら「腎」のケアがおすすめです」でも詳しく解説しています)
この中で、「肺」・「腎」の働きが低下していると、バリア機能が低下すると考えられています。
ちなみに、「肺」は体内の気の循環と呼吸に関連する臓器とされ、「腎」は体内の水分代謝や排泄を担当し、体液のバランスを調整するとされています。
また、漢方では不調の原因をはかるものさしとして、「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があり、「気」と「水」が不足しているときにもバリア機能が低下しやすいとされています。
そのため、乾燥した季節には「肺」を潤し、「水」を補う「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」や「気」を補う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」、「腎」の働きを支える「六味丸(ろくみがん)」などが用いられます。
これらの漢方薬を併用しながら、定期的な換気と室内の湿度を50〜60%前後に保つことで、季節の変わり目や乾燥する季節の感染症などの不調から、身を守る対策となります。
春先とはいえ、まだまだ肌寒いときや、生活環境が変わり、日々の管理やストレス対策などで体調を崩しやすい時期でもあります。
粘膜免疫を維持しながら健康に過ごすためにも、漢方薬を手段のひとつとして候補に入れてみてはどうでしょうか。その際は、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談して、自分に合った漢方薬をチョイスしてもらいましょうね。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic薬剤師・大久保 愛