男性の健康と漢方

男性のカラダのしくみと男性ホルモン

男性のカラダのしくみと成長

男性のカラダには、精巣や陰茎、前立腺などの男性生殖器があります。これらは子孫を残すために備わった男性特有の器官です。
精巣では主に男性ホルモンの分泌と精子の生成が行われています。陰茎は精巣で作られた精子を運ぶほか、尿道としての役割も持っています。前立腺は膀胱の下、尿道を取り囲むようにある器官で、精子の活動を活発にさせる前立腺液を分泌しますが、詳しい働きについてはまだ分かっていません。

男性は母親の胎内にいる間に遺伝的な男性性となり、自身の精巣から放出する男性ホルモンによって徐々に男性的なカラダへと成長していきます。また、そのときに男性らしい性格なども形成されると考えられています。

思春期になって二次性徴が起こると、脳内の視床下部からはGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、それにより脳下垂体からは性腺刺激ホルモンのLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が産生されます。これらは精巣に作用して、LHは男性ホルモン(テストステロン)の分泌を、FSHは精子の生成をもたらします。ちなみに、男性ホルモンは副腎で分泌されるルートもあります。これは、視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、それにより脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が作られるというルートで、このホルモンが副腎に作用して、男性ホルモンが分泌されるのです。

二次性徴ではこうしたホルモンの作用により、男性は男性らしいカラダへと変わっていきます。精巣や陰茎が成長して大きくなり、陰毛が生えてきます。声変わりをはじめ、外見上もヒゲが生えたり、筋肉質になったりして、より男性らしい体つきへと変わっていきます。

男性の思春期のカラダの変化

精巣の容量が増える

陰嚢が大きくなり、皮膚の色が濃くなる

陰茎が大きくなる

陰毛が生えてくる

声変わり

ヒゲが生える

筋肉質でより男性らしい体つきになる

男性ホルモンの分泌は10代で急激に増え、もっとも高くなるのは20代です。20代〜30代の男性ホルモンの分泌は1日あたり14.3〜16.8ピコグラム/ミリリットルで、加齢と共に徐々に減少していきます。とはいえ、女性における女性ホルモンの減少と比べると低下の仕方は緩やかです。そのため、「歳だから……」と済ませられる人もいますが、最近では、男性にも男性ホルモンが減少することで生じる男性更年期が起こることが知られるようになり、「LOH(late-onset hypogonadism)症候群」として治療を必要とするケースも増えています。

年齢によるテストステロン分泌量の変化

男性ホルモン「アンドロゲン」の働き

一般的に、男性のカラダは女性と比べて、骨が太く、筋肉量が多くなっています。これは男性ホルモンの作用によるものです。
男性ホルモンであるアンドロゲンは、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオンなどに分けられます。このうち全体の95%を占めるのはテストステロンで、精巣で作られます。次に多いのはデヒドロエピアンドロステロンです。脳や前立腺、毛根などに存在するテストステロンは、5α還元酵素の働きを受けて、ジヒドロテストステロン(DHT)という形になります。ジヒドロテストステロンは作用が強く、皮脂の分泌や体毛の発育などに関わっています。

男性ホルモンのカラダへの働きを見ると、冒頭に挙げた骨を太く丈夫にする、筋肉量を増やすといったもののほかに、性欲を高める、精子を作る、内臓脂肪がつくのを抑える、造血作用、動脈硬化を防ぐ、皮脂を分泌する、体毛を生やすといったものがあります。最近では、判断力や記憶力などにも関係している可能性が指摘されています。

男性ホルモンの働き

・骨を太く丈夫にする
・筋肉量を増やす
・性欲を高める
・精子を作る
・内臓脂肪がつくのを抑える
・造血作用
・動脈硬化を防ぐ
・皮脂を分泌する
・体毛を生やす
・判断力や記憶力を高める
など

加齢によって減少するのは、テストステロンとデヒドロエピアンドロステロンの2つです。それに伴い、以下のような症状が出てくることもあります。

男性更年期の症状 (男性ホルモンの低下で起こる症状)
カラダの症状
筋力の低下や筋肉痛、ほてり、発汗、頭痛、めまい、耳鳴り、疲労感、ED、朝立ちの消失、頻尿など
ココロの症状
不安、イライラ、抑うつ、不眠、集中力や記憶力の低下、性欲の減退など

監修医師

順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授
順天堂医院総合診療科
漢方先端臨床医学
小林 弘幸 先生
教授 小林 弘幸 先生

1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。

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