発達途上の子どもの心と体
子どもの心身はまだまだ未熟。病気にかかりやすく、周囲の環境や生活習慣が心と体にダイレクトに影響を及ぼします。また症状の現れ方が多様で、その要因は複雑です。だからこそ子ども一人ひとりに向き合い、丁寧に話を聞いていくことが必要になります。
時には検査をしてもはっきりした原因がわからなかったり、西洋薬では症状が改善しないこともあります。食が細く風邪をこじらせやすい、夜泣きがひどい、かんしゃくが強い……。こんな診断のつかない困り事や、検査では原因がわからないけれど子どもが苦しさを訴えているときは、漢方薬が役立つ場合があります。
1剤で多様な症状に対応できる
西洋薬は一つの症状を治療するのに使いますが、漢方薬は複数の生薬を組み合わせているため、一剤でさまざまな症状を解消したり、和らげたりできます。また、体だけではなく心の状態を整える機能を持った漢方もあります。
例えば緊張してお腹の調子を崩しやすいという患者さんが漢方薬を飲むと、胃腸の症状が改善されて食欲がわき、緊張がほぐれていく効果を期待できます。リラックスして栄養のある食事を取れば、おのずと体力が付いて病気にかかりにくくなっていくでしょう。
「漢方薬はすぐには効かない」という誤解
漢方薬になじみの薄い人のなかには「漢方薬は長く飲まないと効かない」「苦いので子どもには不向き」というイメージをお持ちの方もいるでしょう。実際には、漢方薬は時間をかけてゆっくりと体質を改善する処方もあれば咳や鼻水、腹痛などに比較的早く効果を出す処方もあり、さまざまな不調に対応できます。また、味や香りも漢方薬によってさまざま。漢方薬をはじめて飲む子どもには、甘めで飲みやすい薬を出すなどの調整もできます。
頭が痛い、食欲がわかないなど病気として捉えにくい症状は、子ども本人はもちろん、親御さんにとってもつらいものです。日々、子育てに向き合いながら子どもの不調に悩むお母さん、お父さんたちに、ぜひ漢方という選択肢があることを知っていただきたいですね。そのうえで、親子みんなが笑顔になれる手助けができればと願っています。
監修医師
さかざきこどもクリニック 院長 坂﨑 弘美 先生大阪市立大学医学部卒業。大阪市立(現・公立)大学医学部附属病院小児科入局。和泉市立病院小児科、大阪掖済会病院小児科を経て、2004年10月さかざきこどもクリニック開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会地域総合小児医療認定医、日本小児東洋医学会運営委員、日本小児漢方懇話会幹事。『フローチャートこども漢方薬 びっくり・おいしい飲ませ方』など著書多数。