子どもの健康と漢方

よくある子どもの不調と漢方

小児科でよくある子どもの不調

漢方薬といえば「葛根湯(かっこんとう)」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。実は保険適用された漢方薬は約150種類に及びます。長引く咳や鼻づまり、イライラや緊張からくる諸症状など、子どもの不調にきめ細かく対応できます。代表的な子どもの不調と、不調改善に役立つ処方を紹介します。

虚弱体質・風邪をこじらせやすい

子どもはウイルスや細菌に感染しやすく、何度も繰り返し風邪をひきます。看病にあたる親御さんは大変ですが、風邪を繰り返しひくことで免疫を獲得していくのです。しかし、なかには体力がなく頻繁に風邪をこじらせ、入院を繰り返す子どももいます。そんなときは「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」をよく処方します。胃腸機能が改善されるので食欲がわいてきますし、心の緊張を取ってリラックスさせてくれます。小児の漢方薬として非常によく使われるものです。

コンコンという乾いた咳

強い咳込みが続き寝られないときは、症状を和らげる漢方薬を処方します。たんは夕方から夜にたまりやすいので、やはり夜に咳がひどくなることが多いですね。コンコンという乾いた咳の場合は、「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が有効です。西洋薬の咳止めは乾かす方向に働きますが、漢方薬は喉や口に潤いを与え、たんを切りやすくしてくれます。

不安が強い・夜泣き・かんしゃく

赤ちゃんは夜泣きをするものです。けれどあまりにも泣き方が激しかったり、頻回に泣いてしまう場合は親御さんが大変です。また不安が強いとお母さんから離れられない、家から出たがらない子もいます。そんなときは「甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)」や「抑肝散(よくかんさん)」を処方します。興奮を静めて心を落ち着けてくれます。甘麦大棗湯は甘みがあって子どもにも飲ませやすいお薬です。

鼻づまり・鼻炎

子どもの鼻づまりはよくある症状ですが、放置するとさまざまな悪影響を及ぼします。鼻呼吸がしづらいと睡眠の質が下がるため、朝スッキリ起きられなかったり、学校での授業に集中しづらくなります。また口呼吸になるため喉が乾燥しやすく、口腔機能の発達にもよくありません。鼻づまりがつらいときは「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」がよく効きます。「鼻づまりなんてよくあること」と軽視せずに、早めにご相談ください。

お腹が弱い・便秘・下痢

子どもはストレスを受けると体の不調に直結します。不安や緊張を強いられるとお腹がゴロゴロして痛くなる子も少なくありません。そんなときは「小建中湯」が有効です。芍薬という痛みを和らげる生薬が配合されているほか、体を温め、胃腸機能を助けてくれる生薬も多く含まれています。少し大きなお子さんの場合は同じ芍薬が配合された「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」も使います。

親子で飲む漢方

親は、子どもにとって一番身近な存在。だからこそ親の健康状態は、子どもの生育に大きな影響を与えます。漢方には「母子同服(ぼしどうふく)」といって、親子で漢方薬を服用することで一緒に症状を改善させていこうという考え方があります。例えば夜泣きが強い赤ちゃんに処方する「抑肝散(よくかんさん)」という漢方薬は、疲れてイライラしがちな親御さんにも有効です。このほか漢方薬には月経前症候群(PMS)や男性更年期に有用な処方もあります。子育てで疲れてしまったときは、周囲の協力や支援を得ながら自分もいたわってあげましょう。

監修医師

さかざきこどもクリニック 院長 坂﨑 弘美 先生
坂﨑 弘美 先生

大阪市立大学医学部卒業。大阪市立(現・公立)大学医学部附属病院小児科入局。和泉市立病院小児科、大阪掖済会病院小児科を経て、2004年10月さかざきこどもクリニック開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児科医会地域総合小児医療認定医、日本小児東洋医学会運営委員、日本小児漢方懇話会幹事。『フローチャートこども漢方薬 びっくり・おいしい飲ませ方』など著書多数。

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