まとめ

動悸・息切れとは
動悸とは、平常なときは感じることのない心臓の拍動を感じたり、拍動に違和感を覚えたりすることをいいます。一方、息切れとは体内の酸素が不足した際に起こる症状をいいます。
動悸を起こす具体的な病気の代表格は、不整脈です。女性で見つかりやすい病気としては、甲状腺機能亢進症、貧血、更年期障害などが挙げられます。月経にともなって生じたり、妊娠時に動悸が見られたりすることもあります。
動悸を伴う病気のなかには、すぐに医療機関での治療が必要な危険なものもありますので、おかしいと感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。
動悸・息切れの治療
動悸や息切れが出る原因によって治療法が変わります。手術を行う場合もあれば、投薬治療だけですむ場合もあります。これらの治療とあわせて、生活の改善で、動悸や息切れが起こらないようにしていきます。
病院での診察
漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。症状や生活についてさまざまな内容を聞いたり、お腹や舌、脈を触わったりして診察をしていきます。漢方の力をしっかりカラダに届かせるためにも、医師や薬剤師と二人三脚で治療にあたることが大事です。
動悸・息切れ

動悸・息切れのメカニズム

動悸とは、平常なときは感じることのない心臓の拍動を感じたり、拍動に違和感を覚えたりすることをいいます。ドキドキ、ドクンドクンといった表現をすることが多いです。
一般的に心臓の拍動は、1分間に60~90回、睡眠時は40~60回ぐらいですが、運動中の心拍数は年齢やフィットネスレベル、運動の強度、個人の健康状態によって大きく異なります。心拍数が増えることでも動悸を感じます。
一方、息切れとは体内の酸素が不足した際に起こる症状をいいます。
私たちは呼吸で酸素を体内に取り入れ、全身に送っていますが、何らかの理由によってこれがうまくいかないと、体が必要とする酸素が足りなくなり、息切れを起こします。
動悸も息切れも、運動をした後や緊張したときなど、生理的なことで起こるケースが多いですが、なかには病気が原因でこれらの症状が起こることもありますので、注意が必要です。

動悸を起こす具体的な病気の代表格は、不整脈です。脈が何らかの理由で速くなったり、遅くなったり、乱れたりする状態をいいます。このほかには、狭心症や心筋梗塞、心不全などがあります。
比較的若い女性で見つかりやすい病気としては、甲状腺機能亢進症(喉のあたりにある甲状腺から出る甲状腺ホルモンの分泌が増える病気)、貧血、起立性調節障害(血圧の調整がうまくいかず、立ちくらみなどを起こす病気)、更年期障害、パニック障害などが挙げられます。
月経にともなって生じたり、妊娠時に動悸が見られたりすることもありますし、脱水やミネラルの一つカリウムが不足しても、動悸が起こります。このほか、薬の副作用で現れることもあります。生理的な原因で起こるものと、飲酒、緊張や不安など精神的なものなどが挙げられます。

動悸を伴う病気のなかには、すぐに医療機関で診てもらわなければいけない危険なものもあります。とくに以下のような状態があった場合、要注意です。

・原因に心当たりがないのに動悸や息切れがする
・動悸や息切れがしばらく(5分、10分)続く
・他の人と同じスピードで歩けない
・他の症状がある(息切れや息苦しさ、胸の痛み、めまい、だるいなど)

動悸・息切れの薬物治療、非薬物治療

病院では、問診のほか、聴診器で胸の音を聞く聴診も重視します。聴診では拍動だけでなく、心臓の血流が逆流しないようにしている弁(心臓弁)の開閉の音や、血流の音なども聞こえるので、これらが正常かどうかを診ることで診断に役立てます。
このほか必要に応じて、心電図や胸部X線検査、血液検査、超音波(エコー)検査などを行って診断をしていきます。

治療は、診察や検査でわかった病気によって変わってきますが、不整脈など多くの病気では、まず生活習慣の見直しなどが必要になってきます。
心拍は自律神経の働きによってコントロールされているので、自律神経に負担がかかるような生活、たとえば、不規則な生活や寝不足、暴飲暴食などは改善し、ストレスや過労がなるべくかからないようにします。タバコを吸っている人は禁煙が必須です。
あわせて、リラックスできる時間を作ることも大切です。入浴や香り、好きな動画を観るなど、自分に合ったリラックス法を探してみましょう。
運動は病気の種類や程度によってできることが違ってきますので、主治医に相談しながら行いましょう。一般的には、有酸素運動は有用とされています。ウォーキングでは、おしゃべりできるくらいの強度で、じんわり汗をかくくらいが理想です。ヨガやピラティス、アクアビクス、水中ウォーキングなどもおすすめです。

動悸・息切れの漢方薬による治療

実は、動悸や息切れを訴える人のうち、診察や検査で何の異常も見つからず、前述したような西洋医学的な病名診断が付かないようなケースがあります。
そういうケースに漢方薬が有用とされています。

漢方独自の診察の考え方に「気・血・水(き・けつ・すい)」があります。
動悸を訴える人のなかには、生命のエネルギーである「気」のめぐりが悪くなっているケースが少なくありません。その場合は、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や香蘇散(こうそさん)などが使われています。
また、体力が落ちていて「虚証(きょしょう)」になっている人には、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などが、症状が落ち着かず、訴えが一定しない人には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが使われています。
このほかにも、患者さんの体格や体力の程度などによって、いろいろな漢方薬が使われます。

動悸・息切れに使われる漢方薬

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、香蘇散(こうそさん)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

監修医師

大阪医科薬科大学 医学部 外科学講座胸部外科学教室 講師 神吉 佐智子先生
神吉 佐智子 先生

大阪医科大学(現:大阪医科薬科大学)卒、大阪医科大学 大学院修了 博士(医学)。大阪医科大学外科学講座胸部外科学教室に入局。米国ハーバード大学(医学部)留学を経て、大阪医科大学 外科学講座胸部外科学教室 助教。2020年より、大阪医科薬科大学 医学部 外科学講座胸部外科学教室 講師。学校法人大阪医科薬科大学 女性医師支援センター副センタ―長 兼務。

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